千葉省三(私の読書)
ご存知ですか、この千葉省三。
栃木県の児童文学作家です。
小学生の頃の私の好きな作者でした。
その中でも『だれもいない温泉』というのが一番好きな作品です。
主人公の子供が夏のある日お父さんが地図で見つけた小さな温泉場を訪ねる話です。
バスを降りて歩き、たどり着いた温泉場には古い家が一軒だけ、そこが温泉場でした。
ところが留守で、「勝手に入ってください。」
と書き置きがある。
そして二人で湯につかり、休憩してお金を包んで帰った。
それだけの話なんですが、ずっと心に残っています。
帰りのバス停までの道で、そこのおばあさんに会います。
一人息子が出征し、ご主人がたまたま里に降りているから留守にしてすまないと詫びます。
そして主人公の子供は「また来ようね。」とお父さんと話しします。
そこから想像出来る風景もさることながら、鍵もかけず客を受け入れる着飾らないこの温泉場にいつか行きたいと子供心に私も思いました。
その頃にはあって今無いなにかがそこにはあります。
いつまでも読み継がれてもらいたい作品であって作者です。