スタンディングみや(でした。)

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忘れられない事の中に

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♪ 忘れられないことの中に

なんでもないようなことがある

それはいつも記憶のどこかで

色もあせずによみがえる

学生時代を過ごした練馬区江古田を舞台にした『江古田スケッチ』の歌詞で私の好きなフレーズである。

 

一つの町に私の通った武蔵大学、そして武蔵野音楽大学日大芸術学部と三つの大学があり、多くの学生が下宿し、生活していた。

西武池袋線江古田駅より徒歩5分、商店街のはずれの個人宅の一室を学生課の紹介で間借りした。

下宿初日の晩、炊飯器のスイッチを入れ向かいにあった惣菜屋で銀ムツの焼魚を買った。

惣菜屋の息子さんは障害を持っていた、一生懸命焼くその銀ムツは良い焼き色に仕上がり私の食欲をそそった。

決して安価なものでなかったがなんとなく江古田の町の住人になるための通行料のような気がして奮発した。

惣菜屋のオヤジは私を新しい学生だと認識したようだった。

そしてその後その店には一度も行ったことはない。

理由は無い、あるとすればただなんとなくである。

下宿生活初日の銀ムツと炊きたてのご飯、インスタントの赤出汁をよく覚えている。

それから四年間、いろんなことがあった。

でもこれが学生生活における私の忘れられないことの一つである。