思い出すキャッチコピー
知人が今上海を旅行中である。
それで思い出して引き出しを探すと出てきた、この柳原良平の絵葉書である。
柳原良平の絵が好きである。
郷愁を覚える。
そういう時代を生きてきた人であるから当たり前だろうがなんとも落ち着くのは私が昭和の人間だからということもあろうか。
「トリスを飲んでHawaiiへ行こう!」
というのを令和の御代に代わる今、ご存知の方はそんなに多くないのではなかろうか。
調べれば1961年、昭和36年に寿屋(現在のサントリー)が当時売り出していたトリスの景品にハワイ旅行を登場させた。
まだ夢の海外旅行であった頃だ。
その時のキャッチコピーである。
作ったのは寿屋宣伝部にいた山口瞳。
渾身の力作である。
柳原良平も宣伝部の人間だった。
柳原の描いたレイをかけたウイスキー樽を彷彿させるアンクルトリスが登場する。
当時まだ一歳だった私の記憶に残るほどのコピーということは、このハワイ旅行の景品もこのキャッチコピーもそしてアンクルトリスも人々の耳も目も心も奪ったのであろう。
そして今なおなぜか私の記憶には残り、遠く昔になりつつある昭和を思い出させる。
過去にすがるつもりは無いのだが、今よりは生き易かったと思う。
人を助て生きる人が多かったように思う。
日本に帰って来たらトリスのハイボールでも飲みながら修行話をしてくれるだろう。
そして、人の良いアンクルトリスとともに昭和の昔にしばし浸りたい。
この『ウイスタン』も寿屋の製品、名前の通りのウイスキーの炭酸割り。
これも景品になったそうです。
アンクルトリスに連れて行ってもらった店で生まれて初めて見た60年物です。