ニャンコ先生の思い出
子供の頃から猫のいる家であった。
一番記憶に残るのは『ブチ』である。
調べるとキジ猫と言うらしい。灰色のシマシマである。
私が高校から上京するまでの5年間くらい同じ空間で生活した。
前にも書いたが、猫とは同じ家にいるだけでなるべく干渉はしない、エサ、水換え、トイレの世話はする。
同じ空間にいるのをお互いに認識はするが干渉はしないのがブチとのルールだった。
ブチは冬でも二階の私の部屋の窓から出入りしていた。
窓の下にあるベッドはブチの足拭きとなり泥で真っ黒になった。
それでも特に気になる事はなかった。
両親や兄にとっては愛玩猫であったが、ブチにとっては手を出すことのない私は仲間だったのかもしれない。
時々スズメやカナヘビを捕まえてきた。
まだ生きている小動物を捕獲して私の目の前でとどめを刺す。
それを話しすると、あなたを主人と思い見せているんだよと教えてくれる人もいたが私は違うと思っていた。
いつも私の部屋に死骸の一部を残していってくれた。
狩のできない私のために残してくれたのだと思っていた。
いつも叱ること無く、最後まで見届けていた。
私が上京して間もなくブチは姿を消した。
何匹かの猫と同じようにある日帰ってこなくなったと言う。
ゴールデンウィークに東京から帰る道すがら近くの畑でブチを見かけた。
私の声に振り向きしばらく目を合わせた。
こちらに近づく事はなく少しするとそのまま畑の向こうに歩き去った。
あの時ブチは何を思っていたのか今でも知りたい。
成長していく私に頑張って一人で生きていくんだぞ、とエールを送ってくれたのかも知れない。
毎年この時期になると思い出す。