兼題『鱈場蟹』
大阪府島本町で沢蟹を見かけて驚いたのがこの夏、この時期になって覗き込むとやはり冬眠してしまったのでしょう姿を見かけることは出来きませんでした。
幸せに眠っているのであろうか可愛らしい沢蟹に来春また会えるのか気になりました。
いつもの俳句投稿サイト、今日はお便りコーナーの日でした。
そこにのった私の文章です。
兼題『鱈場蟹』タラバガニ
冬の北海道には何度か行ったことがある。
覚えているのは夜のススキノの交差点にあるニッカの髭おじさんが 凍った空気の中、キラキラと美しく輝いていたことばかりだ。
ゼネコンで営業をしていた時には札幌支店まで何度か足を運んだ。
設計事務所時代には某大手家具屋さんの仕事で何度も足を運んだ。
その気になればいくらでも北の漁場で揚がった蟹を食べる機会はあ ったのだが、なぜか蟹とは縁が無かった。
もちろん、鱈場蟹と出会う事はなかった。
鱈場蟹ではないが食べれなかった蟹の思い出は他にもある。
京都営業所で営業をしていた時、 上司に日本海まで蟹を食べるためだけに泊まりがけで連れていって もらったことがあった。
上司は会社の元野球部のスター選手、 引退して営業マンとなっていた。 きっぷのいい営業部長であった。
単身赴任の部長に、 週末奥さんが東京から来るが二人きりでは身も心ももたないからつ いて来てくれと言われて、 独身だった私はカニツアーに参加することになった。
そこでのカニ料理を目指して一泊二日のカニツアーはスタートした 。
京都駅で奥さんを迎えて山陰線に乗り換えた。
生まれて初めて乗ったグリーン車ではすぐに宴会が始まった。
上司以上に酒を勧めるのが上手な奥さんは魔法のバッグから次から 次へと缶ビールやらワンカップの日本酒を出してくる。
東京で買ってきたという巻き寿司やら京都駅で買い込んだ大量の乾 き物、次々と封を切って私の目の前に出てくる。
若かった私は断るすべを知らず、 山陰線の車内で延々と飲み続けて食べ続けた。
実は前の晩に飲み過ぎてかなり重い二日酔いだった。
日本海が見えてきた頃にはその二日酔いを乗り越えて再び完全に出 来上がってしまった。
そればかりでなく胃袋は張り裂けんばかりにふくらみ顔面蒼白で冷 や汗までかいていた。
そして、そのまま私はダウンしてしまったのだ。
ホテルのベッドに横になりカニのフルコースは夢で終わってしまっ た。
そんな悲しく漫才の落ちのような思い出を今回の季題『鱈場蟹』 は私に甦らせたのである。/宮島ひでき