『うなぎパイ』の話
便利な世の中になり、時々故郷である愛知県のニュースを自室で見ることがある。
コロナの影響はやはりあった。
隣接市の浜松市の名産『うなぎパイ』は愛知県の我が家にも何故かよく食卓にあった。
今では確かめようも無いが、父の知り合いがいたようである。
試作品も食べたと言っていたのを憶えている。
『夜のお菓子』
とタイトルしたうなぎパイである。
当初、夜の家族団欒のお茶うけにしてもらおうとしたタイトルは違う方向で受け取られ、前向きな春華堂はならばと赤と黄色の派手なそれ向きなデザインに変えたらなお売れた、とホームページに説明がある。
楽しいホームページである。
いい会社なのであろう。
ホームページからもそれを感じる。
操業停止中も社員に給料は満額払うとニュースは記事にしていた。
『寄らば大樹の陰』
という言葉があるが、こんな非常時にはこの通りだと思う。
飲み屋を経営していた時、続けて毎週末に台風がやって来て泣きたくなった事がある。
『お天道様にゃかなわねえ』と嘆く時代劇に出てくるお百姓さんの気持ちが少し分かった気がした。
天災や今回のような不可抗力なことに出会ってしまったら、開きなおることだと思う。
開きなおれば、案外冷静になれる。
それから考え、スタートした方がいい。
春華堂は工場の操業を停止しても社員に安心を与えてカラダも心も休ませて、その間、経営者は必死に次に打つ手を考えているに違いない。
次に愛知にいる母、兄に会うのは四月であろう。
新幹線に乗る前に売店で『うなぎパイ』を買って缶チューハイ片手にこだまの席に身をゆだねたい。
もちろん、家内への土産をカバンに詰め込んでだ。