永訣の朝
宮沢賢治が好きでした。
童話よりもこの詩が好きでした。
中学の教科書で出会ったと思います。
けふのうちにとほくへいってしまふわたしのいもうとよ
で始まるこの詩は私に賢治の亡くなりいく妹への深い愛を感じさせ、あたり一面真っ白な雪の世界を想像させました。
私の育った愛知県三河地方では想像出来ない世界なのですが、母の故郷山形県南陽市での祖父の葬儀が雪の中だったのがなんとなく記憶に残っていました。
銀世界の中での厳かな儀式だったと思います。
先週末、母と兄の待つ豊川に向かう新名神を早朝走る途中、強い雪が降ってきました。
帰りの道中を気にしながら、思い出したのがこの詩でした。
雪の世界は特別です。
心が洗われ、素直な気持ちになれるのは私だけではないでしょう。
その中で日常生活を送らなければならない雪国の皆さんには叱られそうですが、雪にはそんな力があるように思います。
あめゆじゅとてちてけんじゃ
で外に走る賢治には妹への必死、に加えて雪の力もあったのではないでしょうか。
帰りの西名阪道でも雪に降られ大阪に戻りました。
大阪もこの雪の純白が汚れのすべてを覆い隠しているかと思いきや、真っ白なのは少しの雪と塩カルで白くなった私の車だけでした。