母とラジオ
真剣に内容に耳を傾けることは少なく、BGMとして流していることが多い。
その方がものが考え易かったり、作業がはかどったりする。
母もこれをよく聴いていた。
母もいつも考え事をしていたんだろうと思う。
眠れぬ夜をラジオとともに過ごしていたんだと思う。
高校生の頃、母に「昨日の夜、ラジオで素敵な音楽を聴いたけど、なんて曲なんだろう」と問われたことがある。
妙な事を言う母だと思った事を記憶している。
今ならまだしも、その当時放送局に問い合わせでもしなければ確かめようもない事だ。
そんな事を覚えていることも妙ではあるが、音楽とは無縁な母であったから妙に頭に残っていたのかもしれない。
覚えていようと努力してここまで記憶に残してきた事ではない。
人の記憶を不思議に思う。
そしてその記憶の甦るきっかけが五感であり、反射的に甦ることが面白いと思う。