二本の帯

使用前、使用後のような二本の帯。

小汚い帯が私のものです。

36年ほど前、武蔵大合気道部で初段を頂いた時、先輩方から頂戴した黒帯です。

先輩からのその時の言いつけ通りに一度も洗っていません。

ずっと使っているからでしょう。

カビが生えたり、腐ってきたりすることはまだありませんのでご心配なく。

初段を頂き、初めて黒帯を締めた感動は残っていません。

それよりも関東の各大学合気道部の新幹部が千葉県勝浦市にある武道館研修センターに集められ一泊でのリーダーズキャンプがあったのですが、私たち同期三人だけが白帯で参加しました。

理由は忘れましたが、市橋先生から叱られたんですね。

私たちの初段の免状はなかなか手元に届きませんでした。

他大学の連中から大変だなぁ、と肩を叩かれたのを思い出します。

黒帯の思い出と言うより正確には黒帯を締める前の思い出ですね。

思えばずいぶん叱られました。

そして先生のおかげで私たちの今があります。

多くの思い出を染み込ませた帯です。

この新しい黒帯を初めて締める彼にもいろんな思い出を染み込ませていってもらいたいものです。

畳の上の合気道が全てではないと市橋師範に教えられました。

彼にも生きていくすべてを合気道だと思ってこれから精進していってもらいたいものです。

この帯は私が道場を去る日が来たら洗濯してみようと思います。