砂漠の夢
子どもの頃から砂漠の国に憧れていた。
何も無いところに行きたかった。
子どもながらに自分が置かれている環境に理不尽さを感じていたのだと自己分析をしている。
砂漠にいる夢もよく見た。
でも嫌ではなかった。
最近インターネットの写真で砂漠の真ん中のオアシスの写真を見てそれを思い出した。
よく写真で見る地平線まで砂丘が続く砂漠は砂漠全体の数パーセントだと本で読んだことがある。
砂漠のほとんどは岩や石の転がる沙漠なのである。
砂の土地ではなく水が少ない土地という意味である。
不幸で理不尽な亡くなり方をした中村医師が命を捧げたアフガニスタンのようなところである。
何もないところだから宗教がおこり、何もないところだから争いが起こるのであろう。
いやな話である。
そんなところで生活をしたかったのではない。
ただ行ってみたかった。
それも最近はそうも思わず、夢に出てくることも無くなった。
少し私の生き方が楽になったのか、私に耐性が備わってきたのかのどちらかであろう。
しかし、いつかまたエジプトあたりに行ってみたい。
良いことも悪いことも全てを包み込んでくれるような土地だった。
ナイルの流れは静かにとうとうと流れていた。
大地という言葉を初めて実感した。
日本では決して享受出来る事のない感覚であった。
この日本においてたくさんの人の中で生活をしながらも砂漠の中で生きてるように感じている人が案外多いのかも知れない。
クールファイブが唄ったあの『東京砂漠』のように。
私もそんな時があった。
気持ちの持ちようも大きいと思う。
人間はそんなに弱くはない一度経験すれば大きかった峠も次からは簡単に乗り越える事が出来る。
そんな事の繰り返しが人生なんだと思う。
私の心の中のオアシスが広がって沙漠が隠れてしまうほどになり、沙漠の夢を見なくなったのかも知れない。
