田原の空
愛知県三河地方の冬の空は青い、そして垣根の椿は濃いピンクである。
兄のいる田原市の空の写真である。
空の足元には風力発電のプロペラが地球の自転の駆動力のようにグルングルンと回っている。
私たちが子どもの頃には海だった場所を埋め立てた上でプロペラは回っている。
魚釣りの冬は風が厳しく寒かったのを思い出す。
釣れても釣れなくても楽しい子どもだけの時間が流れていた。
あの頃から半世紀も時は過ぎ、寒い冬に外で遊ぶ子どもなど見かけなくなってしまった。
出生数が急減したなんてヘンテコなニュースが流れている。
どんな予測をしてきたのであろう。
聞かなければ疑問の起きない事実である。
埋め立て地にはトヨタの工場もやって来てそのほかたくさんの工場や貿易関連の施設がある。
地域は裕福となり、住み良い地域のランキングにも入って兄貴もその恩恵に預かっている。
だから、文句を言うわけではない。
子どもの頃の記憶ののどかな海岸が懐かしいだけである。
知らなければなんてことはない事実である。
最初から今しか知らない人達には当たり前の風景、でも、知っている人間にはため息が出る。
そんなことって案外多いかも知れない。
昔は良かった、なんて年寄りくさい事を言おうなんて気持ちは毛頭ないのだが。