兼題『狐火』
狐火(きつねび)を見たことのある人はいるだろうか。
もちろん私にはそんな経験は無く、見たいとも思わない。
今回の俳句投稿サイトの兼題が『狐火』だったのである。
こんな事まで季語となる俳句は面白いなぁ、と思うが、まだその妙味にたどり着けず富山のねずみ男先輩の背中を追っている。
今回のお便りコーナーの投稿文章である。
◆今週のオススメ「小随筆」
お便りというよりは、超短い随筆の味わい。人生が見えてくる、お人柄が見えてくる~♪
『豊川稲荷』をご存じの方は多くいらっしゃると思う。
小学生の頃豊川市の中心あたりにある体育館やプール、自衛隊の駐屯地から少し外れて豊川稲荷あたりまでが私たちの遊び場のテリトリーであった。
大晦日から正月にかけては警察の警備・誘導が入るほどの参拝客でごった返す場所であるが、平日にうろつきまわる私たちには静かで不気味な遊び場でもあった。
陽の当たるのんびりした境内から続く参道には、『豊川稲荷』とその上に狐火のような『宝珠』が白抜きされた奉納されな赤いのぼり旗が立ち並び、それに沿って歩くと辺りはうっそうとした林に変わっていく。
いかにも何かが出てきそうなそんな場所に『霊狐塚』(れいこづか)はある。 稲荷大神の使いが狐だそうである。
北海道で見たキタキツネは可愛かったが、この『霊狐塚』で見るたくさんの狐たちは怖い、石の狐が己が思う方向それぞれを向き、山ほどの数の狐たちが小高い塚やその周りを埋め尽くしている。
祈願成就された方々の御礼と子供の頃に聞いた記憶があるが、どうして狐の置物なのか私には不明のことであった。
現在は流行りのパワースポットとして人気があるそうだが、そんなあやかりたい気持ちで近づく場所ではないと子供心ながら直感していた。
子供たちの間では『出るぞ』の場所であった。 人魂を見たという奴もいた。 どうして夜に『霊狐塚』に近づくのか不思議だった。
私は幸か不幸か『狐火』も『人魂』も見たことはない。
たぶんこれからもないであろう。
そういう人だと自分のことを思う。
そんな私とは違って家内は見ることの出来る人である。
私がまったくタイプの違う人間だと分かっているからいちいち口を開かないが、「あなたは気付いてないだけよ」と一度だけ言われた事がある。
「でも、あなたの付き合う人間たちの方がよっぽど怖いかも知れない」とも言われたように記憶もする。/宮島ひでき