天の川の見える村
NHK朝7時のニュースで長野県下伊那郡阿智村の話題をやっていた。
星で町おこしをしている事を知った。
父の実家に向かう途中通過するのが現在の阿智村の浪合という地域だった。
子供心に山の中の『浪』という漢字が不思議だった。
今のようにコンビニがあるわけでもなく、ジュースの自販機もたくさんは無かった。
峠の茶屋のような古ぼけたそば屋があり(しかなく)、そこで何度か遅い昼を家族で食べた記憶がある。
古い建屋に古い机と椅子、電灯も古いのか明るくなかった。
大きなヤカンの出がらしの番茶はぬるくて苦かった。
頼んだキノコそばは地元のキノコなのだろうが、驚くほどデカいキノコはどうしても食べることが出来なかった。
父の故郷はその隣である。
ずっと生活してきたおじさんたちに怒られそうだが、恐ろしいくらい何も無いのだ。
テレビもNHKの総合と教育しか映らなかった。
NHKは受信料でこんな辺鄙な地域にも途中の山に中継基地を置いてテレビ放送を公平に受信させていると父から聞いた。
こんな事を知るとなんとなくNHKの受信料にも納得がいく。
こんな受信料の使われ方も広く知られていいのではないかと思う。
それくらいの田舎なのであるが、何もない分、もともとある空気と水はきれいで美味かった。
そして夜の星空は圧巻であった。
うるさいくらいの星がそこにはあった。
人工衛星が星空を横断した。
流れ星は落ちるだけではなく、上にも左右にも縦横無尽に流れていた。
天の川も当然見えた。当たり前なのであるが星の集合体が川のように見えた。
祖母が寝たきりになり、末息子の父の嫁は看護師ということもあって仕事を休んでまでして看病に駆り出された。
幼稚園にもまだ行ってない私は母について星の降る村に行った。
夜中戸外のトイレには恐ろしくて行けず、母の手に引かれて裏の畑で小用を済ませた。
その時見た星空に横たう天の川が今でも忘れることが出来ない。
それ以降あれだけたくさんの星は見ていない。
今よりももっと日本の空は澄んでいたに違いない。
私のこの記憶はとても希少で貴重なものかも知れない。
こんな思い出を母と共に持つ私は幸せかも知れない。
口で説明出来ない美しさってあると思う。
自分の記憶にだけ置いておけはいいのかも知れない。
でも出来れば今の子供たちに天の川を見せてやりたい。寒さに凍えながら満点の星空に見入ってもらいたい。
朝から懐かしさが一杯であった。
写真は阿智村のホームページから、こんな夜空を母と見上げましたよ。