母との別れ
長い長い時間でした。
人が生まれる意味と、不公平さを考える時間でした。
でもそれは私の独りよがりだったかも知れません。
兄が被害者だと思い、その加害者をずっと探して来たような気がしています。
しかし、時間は遡れるものではなく、これをいつまでも思い続ける事は兄への失礼であり、母の気持ちを逆撫でする事だったのかも知れません。
どうも私は無駄な時間と労力を割いてしまっていたようです。
言いたい事もあったでしょうが、いろんなことを秘めたまま母は行ってしまいました。
兄の不具への責任を感じ生きた母の半生でした。
独りで背負い込んで歩いて来た母の人生でした。
そんな母の姿が時間をかけて私に納得させたようです。
母も兄も誰も恨んではいません。
今ある自身を受け入れている二人です。
毎朝目覚める度に変わることの無い二人の苦労、苦悩、苦痛は私の勝手な想像だったのかも知れません。
七年間お世話になったグループホームを母がお別れする時間は私の都合で深夜となってしまいました。
それにもかかわらず、たくさんの職員の方に見送っていただきました。
逆らうことなく、受け入れて生きてきた二人をやっと分かったような気がします。
そして自分の不甲斐なさや、足らなさを感じます。
人生の師匠であり、強い母であったハルヱと別れました。
一人、また一人と私の師匠はこの世から居なくなります。
当たり前ですね、気が付けばもう還暦が目の前に迫っているのですから。